阿部とタカヤの×××5


ふっ、と目を開くと心配そうに自分を覗き込む元希の顔が見えた。
長い昼寝から目覚めたときのように、頭が混濁している。ぼんやりと元希の顔を見つめかえすと、大きな掌がおりてきて頬を包まれた。
「タカヤ?」
囁くように名を呼ばれて同時に軽くキスをされた。
おとなしく目を閉じて受け入れていると、唇を離した元希がもう一度確かめるように自分の名を呼ぶ。
「タカヤ」
「なんですか?」
額を寄せるようして顔を覗きこまれた。
こんなふうに元希と触れ合うことが、なぜか久しぶりなような気がする。
眠る前の記憶を辿ろうと隆也が目を瞬かせていると、
「タカヤだな」
嬉しそうに告げた元希に痛くなるほど強く腕の中に囚われた。
「あたりまえでしょ。・・・いったい誰にキスしてるつもりだったんすか?」
「タカヤに決まってんだろ。バーカ」
一瞬、虚をつかれたように元希は目を見開いたけれど、すぐに笑みを浮かべると額を軽くぶつけてくる。
「それより、お前、どっか痛くねーか?」
「え?ああ。いや、別に・・」
問われてみれば手のひらと膝がヒリヒリするような気がするが、とりたてて告げるほどのことでもない。
「そっか、よかった」
包みこまれるように見つめられて、気恥ずかしくなる。いったい今日の元希はどうしたというんだろう。
「元希さん、オレ、なんかしました?」
「あ?なんで?」
「どうも、頭がぼんやりしてて何やってたか思い出せないから・・」
そう呟きながら、模糊とした頭の中の記憶を懸命にたどっていると、不明瞭なイメージが思い浮かんだ。

「・・・あ」
「どうした?」
小さく声をあげた隆也に首を傾げる。
「そういえば、オレ、なんかヘンな夢見てました」
「へー」
「夢の中でオレ、高1になってて。・・・前々から元希さんと同じ年だったら、もうちょっとケンカしないですむのかなって考えてたからかもしれないすけど・・・」
「おまえ、あいかわらずしょーもねえこと考えてんのな。で、どうだったんだよ」
「元希さんも高2になってたから結局年上のままで、しかもオレたちよりすげーケンカしてました」
「あー、そんで?」
「夢の中でオレ、元希さんのこと最低の投手で顔も見たくないくらいイヤな奴だと思ってて、違う高校に進学して別のヤツとバッテリー組んで・・」
「なんだよそれ、ひでえなあ」
おおげさに元希が天を仰ぐ。
「・・・でも」
「でも?」
記憶を呼び起しているうちに自ずと俯きかげんになっていた隆也がすうっと顔をあげる。 会話を促すように視線を投げかけてくる元希と目があった。
「でも、結局仲直りしてました」
「へー」
ひときわ柔らかく顔をほころばせると、元希が再び腕に力をこめてくる。隆也は額にキスをうけながら、上目遣いでそっと喜色満面のその表情を窺う。
やっぱり、今日の元希はやけに浮かれている。いったいどうしてなんだろう。
「元希さん?・・・なんかいいことでもあったんすか?」
上機嫌の笑みを浮かべた元希が、もう一度額に派手な音をたててキスをした。
「ん、いーや。そりゃ、よかったな」




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某動画のインスパイア作品。なぜか結婚しちゃってる二人。
新婚ネタだからもっとイチャイチャベタベタさせるはずだったのに、
曲を尊重してドラマ「吾輩は主婦〜」のダブルパロにして、
かわいいタカヤに拗ねてる阿部を憑依させてしまったため
結局いつもの二人になってしまいました。こんなはずじゃ・・。
そもそも自分が書いててわけわかんなくなりそうだったんですが、
皆さま、ちゃんとついてきていただけたでしょうか・・。
最大の反省点は、美しい戸田北の出会いのシーンを汚してしまったことです。
タイトルは入れ替わりネタつながりで森永先生の作品名をもじり。
拍手にシュンちゃんをまきこんだ夫婦喧嘩のおまけ。
(2007/11/4)